受験のきっかけ
1. はじめに:なぜ今、甲種を目指すのか
私は約40年前、大学の農学部で有機化学系の学科を卒業し、その後は製薬会社に勤務していました。しかし、年月とともに当時の知識はほぼ忘れ去られ、かつての専門分野も今では遠い記憶の中にあります。
当時の同級生たちの多くは、卒業と同時或いは在職中に「危険物取扱者甲種」を取得していたそうです。
しかし私は別の道を歩み、事ある毎に受験を避けて通り、定年を迎えた今、改めてかつて大学で化学を学んだ「証」を形に残したいという想いで、この試験に挑むことにしました。
いわば、人生の後半戦における「大人の学び直し」としての挑戦です。
実際に受験準備として学習方法や使った参考書、問題集、電子機器、使用アプリなどの武器については別の記事でたっぷりご紹介しますのでこの記事では何故受験したかという事と実際の試験についてご紹介します。
2. 試験当日:静かな熱気と想定外の「違和感」
試験当日、札幌の街は大雪の予報でしたが、幸い移動に支障はありませんでした。
試験会場は自宅から地下鉄を使ってドアツードアで約20分と至近であったのですが余裕を持って着く予定でしたしたので11時半には家を出ました。
到着したのは12時ちょっと前。
会場内には既に多くの受験者が集まっており、それぞれに参考書やノートを広げて試験前の最後の復習をしているようでした。
13時30分の開始に向け、会場2階のカフェで自作のまとめノートを見返し、最後の「確認」に没頭しました。
12時45分に入室。試験官は70歳前後と思われる落ち着いた、優しい印象のお二人。
さてさて問題用紙と解答用紙が配られ、13時30分丁度に開始の合図がされました。
空調や体調などの環境は万全でしたが、問題を開いて見た瞬間、少しだけ頭がぼーっとするような感覚がありました。「これは緊張しているな」という自覚。
そして何より、通しで問題を解く実戦経験が乏しいゆえの「違和感」が、私を襲いました。
そう、実は試験問題45問を通しで解いたのは1週間ほど前に消防士研究センターのホームページにある過去問を一度解いただけでした。この経験不足が後々に響いてきます。
今から思うとやはり本番形式での練習は数回いやもっと必要であったかなというのが正直な感想です。
3. 魔の20分:プロパンとプロパノールの罠
その影響は「物理・化学」の分野で現れてしまいました。
物理・化学のとある問題で**「プロパン9gを完全燃焼させるために必要な酸素量」**を求めるもの。
本来なら3分で終わるはずのサービス問題です。
ところが、私はここで致命的なミスを犯します。
なんとプロパン(C3H8)と書くべき反応式を、なぜかプロパノール(C3H7OH)で書いてしまったのです。
当然、答えが選択肢にありません。焦って3回計算をやり直し、ようやく読み違えに気づいたときには20分ほどが経過していました。
更にこの試験では45の設問に関して150分の時間が与えられているので途中の20分位は全く問題の無い範囲なのですがこのパニックで頭に血が上ってしまい、そんな事も頭に思い浮かばずに混乱したまま独り戦うことになりました。
4. 試験の終わりと静寂の退席
しかし、ここで諦めませんでした。
続く「性質・消火」の20問では集中力が極限まで高まり、1問1分のペースで解答。なんとか終了10分前に全てのマークを終えました。
薄々は気付いてはいましたが、頭を上げると最後は私一人になっていました。
退席しようと手を挙げた瞬間に試験官が一目散にやってきて、机に貼ってある受験番号を私の解答用紙に貼り付けてくれました。私一人が終わるのを待っていてくれたのでしょうね。
コートを着て外に出ると、札幌の街には雪がちらほらと降っていました。街行く人もまばらで、静まり返った景色の中、尚更虚しい思いで帰宅の途につきました。
最後に敗因分析を
この試験の結果は3週間後に判明しますのでまだ合否は正確には分かりませんが、残念な結果に終わる可能性が非常に高いです。
その残念な結果に終わると仮定しての今回の失敗を数点挙げてみます。
- 教材選び
今回私は下記の2冊の参考書と問題集を用意しました。


危険物取扱者甲種試験のバイブルと言われている弘文社の「わかりやすい!甲種危険物取扱者試験」と
公論出版「甲種危険物取扱者試験 令和7年版」の2冊です。
ただ私はあまり長くの学習期間を設けたくなかったので手を広げずに学習したいという考えがあったので前者の参考書1冊に絞って進めました。
あくまで過去問中心に進めるという戦略は資格試験の勉強ではよく取られる戦略で悪くはなかったのですがここで選択を間違えたと試験が終わって帰宅してから初めて気付いたのでした。
というのもいわゆる工藤本には問題が412問と類題が掲載されていますが結果的に私にはそれでは足りなかったのです。
412問は2周し、更に2回目でも間違えた問題はリスト化し、後に説明するGoodnotes6のフラッシュカードにして演習をしました。ただ工藤本の問題の守備範囲が私には狭かった。
頭のいい方は狭い守備力でも未知の問題に対応できるのでしょうが私には無理でした。
公論出版の過去問を何回か回す必要があったのは否めません。
あと先ほど少し触れましたが帰宅して合ってるかどうかが疑わしい問題を3題程、覚えて帰ってきて工藤本と公論出版で調べてみたのですが工藤本には載っていない問題でしたが3題とも公論出版の過去問にはしっかり掲載されている問題である事が判明して愕然としたのでした。
これはAmazonの口コミ欄でも合格者が皆、口を揃えて書いてますしちょっとググったブログでも書いている方がいましたので確かな事だと思います。
公論出版の出版社の方の紹介文では
「危険物取扱者試験は、多くが過去に出題された問題から繰り返し出題されています。
そのため、過去問題を効率よく解き、その内容を覚えることが試験合格への近道と私たちは考えています。」とあり実際、試験を受けた上で過去問を作成しているようですので間違いの無い事なのだと思います。
- 模擬試験経験不足
もう一つはこれ、実践形式の練習になれていなかった事。
やっぱり通しで2,3回は模試形式で受けた方が良いですね。
時間配分と言いますか、分からない問題が出てきた時のその問題への時間のかけ方とかは体で覚えなければならないと思います。
出来る限り通しで模擬試験を受ける事が大事だと痛感したのでした。
【技術解説】今回のミスを教訓に:プロパンとプロパノールの違い
今回の混乱の原因となった2つの化合物の構造と燃焼反応式を整理します。
■ プロパン (Propane)
炭素3個のアルカンです。
- 示性式: CH3CH2CH3
- 構造式:
Plaintext
H H H
| | |
H — C — C — C — H
| | |
H H H
- 完全燃焼反応式:C3H8+5O2→3CO2+4H2O※ プロパン1molに対し、酸素は 5mol 必要。
- これが分かれば後は簡単な計算。まあこの反応式自体も比較的簡単なものですが。
■ 1-プロパノール (1-Propanol)
プロパンの水素1個が水酸基(-OH)に置換されたアルコールです。
- 示性式: CH3CH2CH2OH
- 構造式:
Plaintext
H H H
| | |
H — C — C — C — O — H
| | |
H H H
- 完全燃焼反応式:C3H7OH+4.5O2→3CO2+4H2O(係数を整えると:2C3H7OH+9O2→6CO2+8H2O) ※ プロパノール1molに対し、酸素は 4.5mol 必要。
一文字の違いで、必要な酸素量が変わってしまいます。この構造の違いを、今度はしっかりと「自信」を持って見極めたいと思います。
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