【暗記術】資格の暗記は無印の108円メモ帳で乗り切れる|アクティブリコール実践記

覚えたつもりのことが出てこない。知識として定着しない。思い出せない。

資格の勉強でいちばん苦しいのはやはり暗記ではないでしょうか。

私は60代になってから3つの国家資格を取りました。危険物取扱者甲種、二級ボイラー技士、第二種電気工事士です。どれも過去問を繰り返せば受かる試験だと書いてきましたし、その考えは今も変わりません。ただし過去問をいくら回しても、最後まで残る「どうしても覚えるしかない部分」というものがあります。

結論を先に言ってしまいます。私がその壁を越えるために使ったのは無印良品の108円のメモ帳とボールペンだけでした。 アプリでもiPadでもありません。1枚0.54円の紙に書き殴っては捨てる。それだけです。

この記事では、なぜその安いメモ帳が暗記に効いたのかをアクティブリコールという勉強法と絡めて書いていきます。あわせて、思い出せない自分に嫌気がさして逃げ出したくなるあの気持ちについても正直に書くつもりです。

目次

過去問を回すだけでは越えられない壁がある

3つの資格に共通して言えるのは、合否を分けるのが「過去問を何周回すか」だということです。反論が有る方もいらっしゃるかもしれませんが少なくとも私はそう信じています。何故なら頭が良いとは言えず、かといって記憶力が人並み優れているとも言えない私が3つとも一発合格しているからです。

 第二種電気工事士の学科も危険物取扱者甲種試験も二級ボイラー技士も過去問を3〜4周したところで合格ラインを超えられました。

ただし、それだけで全部が片づくわけでも無いのも確かです。過去問を解いていると必ずぶつかるのが「これは理屈ではなく覚えるしかない」という一群の項目です。しかもその量は決して少なくありません。

たとえば私の場合はこうでした。

  • 危険物取扱者甲種:消防法別表第一、指定数量、物質の性状、法令
  • 二級ボイラー技士:関係する法令、構造のうち附属装置
  • 第二種電気工事士:各種工事の種類とそこで使われる電線管の種類・用途・特徴、絶縁抵抗や接地抵抗といった検査方法と計器の使い方、電気工事士法などの法令

とくに危険物甲種は暗記量が群を抜いていました。ここを曖昧なままにしておくと、過去問で正解できても本番で少し表現を変えられた瞬間に手が止まります。

では、この部分をどうやって頭に入れるのか。テキストを何度も読み返すのがいちばん素直なやり方に思えます。ところが私の場合、読んでいるあいだは分かった気になれるのに、いざ問題を前にすると出てこないということが何度もありました。覚えたつもりが知識として定着していないわけです。

アクティブリコール(想起練習)という勉強法

テキストを閉じて何も見ずに自力で思い出す。これをアクティブリコール(想起練習)と呼ぶそうです。心理学の世界では「テスト効果」として古くから知られている手法です。

具体的なアクティブリコールの実践法としては以下があるそうです。

① 白紙復元法(ブランクページ)

テキストを閉じ、覚えている内容を白紙にひたすら書き出す。まさにメモパッドに書き殴っているこれです。アクティブリコールの最も素朴で強力な形。

② 図の再現

構造や関係を図にして覚え、図ごと書き出す。ボイラーの附属装置、電気工事士の複線図がこれ。「情報がひとかたまりで立ち上がる」という著者の実感は、認知科学でいうチャンク化(かたまりで記憶する)に対応します。

③ 自己テスト化/自作クイズ

覚えたい項目を「問い」の形に変えて自分に出題する。過去問を解いたあと、解説を閉じて「なぜこの選択肢が正解か」を自分の言葉で答える、というのも同じ系統。資格試験と相性が非常に良い型です。

④ フラッシュカード(Anki等の想起アプリ)

表に問い・裏に答え。競合記事の多くが行き着く先。著者はあえて紙を選んだので、記事では「紙 vs アプリ」の対比材料として触れる程度が良いです。

⑤ ファインマン・テクニック

誰か(架空の初心者)に教えるつもりで、何も見ずに説明する。説明に詰まった箇所=理解の穴。ボイラーの構造が「最初さっぱり分からなかった」話と噛み合います。

私が面白いと思ったのは、この分野の研究が「読み返しても覚えられなかった」「マーカーしても記憶に残るわけではない」という自分の実感をきれいに説明してくれることでした。

研究1:読み返しは「直後だけ」強い(ローディガーとカーピキー、2006年)

文章を読んだあとに「もう一度読み返す群」と「思い出すテストをする群」を比べた研究です。5分後にテストをすると読み返した群のほうが成績が良いのに、2日後や1週間後になると逆転して思い出す練習をした群が大きく上回りました。

つまり読み返しは直後だけ強い。読んだ直後は覚えた気になれます。ところが試験は数週間から数か月先にあります。そこで効くのは思い出す練習のほうだったわけです。

研究2:きれいなノートを作るより思い出したほうが効く(カーピキーとブラント、2011年『サイエンス』誌)

想起練習と「まとめノート作り」に近い作業を比べた研究です。結果は想起練習の勝ちでした。しかも参加者本人の予想は逆で、まとめノートのほうが効くと思われていたそうです。

時間をかけてきれいなノートを作ると勉強した気になれますが、効率という点では割に合いません。身に覚えのある方も多いのではないでしょうか。

要するに、手を動かして思い出す作業に時間を使ったほうがいい。これが私の結論です。そのために必要な道具はごくわずかでした。

相棒は無印良品の「メモパッド」108円

使ったもの:無印良品 メモパッド 140×100mm・200枚・税込108円

項目 内容
商品名 メモパッド
サイズ 140×100mm
枚数 200枚
価格 税込108円(私が購入した当時)
1枚あたり 約0.54円
紙質 藁半紙のような薄い紙
罫線 なし(無地)

高級なノートではありません。むしろその逆で、藁半紙のような安っぽいメモ帳です。ですが、この安さこそが暗記には効きました。

1枚0.54円だと、書いては捨て、書いては捨てるのが全くもったいなくないのです。

これは思っている以上に大きな違いです。立派なノートを使うと、どうしても「きれいに書こう」という気持ちが働きます。ページを無駄にしたくないので字も揃えたくなります。しかし想起練習でやりたいのは頭の中から引っ張り出す作業であって、清書ではありません。読み返す予定のない紙にひたすら吐き出す。そのためには遠慮なく使い潰せる紙であることが条件でした。

罫線がないのも私には合っていました。文字も図も同じ紙の上に好きなように書けます。表を書きたければ線を引けばいいだけです。

私が使い切ったメモパッドは結局3冊になりました。

このメモ帳には弱点もあります

紙が薄いので、書いたものを資料として保存する用途にはまったく向きません。あとから見返して整理したい人、勉強の記録を残しておきたい人には不向きです。

また藁半紙なので繊維があちこちは知っていて手でちぎろうとすると綺麗には切れません。なんだか凄く恥ずかしい姿になります。

ただ、私はこれを欠点だとは思っていません。そもそも残さない使い方をするための紙だからです。きれいなまとめノートを作りたい方には別の商品をおすすめしますが、この記事で書いている用途に限れば、残らないことがそのまま長所になります。

なぜ紙とボールペンだったのか

念のために書いておくと、私はデジタルが苦手なわけではありません。危険物甲種と二級ボイラー技士のときは iPad mini と Apple Pencil を常時使っていましたし、テキストや過去問を取り込んで書き込みながら勉強していました。これは今でも良いやり方だと思っています。

ただし、記憶のアウトプットに関してだけは紙とボールペンのほうが圧倒的にやりやすかったのです。

理由は自分でもはっきり説明しきれません。ボールペンを握ってメモパッドに書き殴っていくと、頭の中から言葉や図が出てきやすいのです。デジタルだときれいに残ってしまうぶん、どこかで丁寧に書こうとしてしまうのかもしれません。残るということは捨てられないということで、捨てられない紙には書き殴れない。これは私の実感にすぎませんが、道具は使い分ける価値があると思います。

もう一方の相棒:三菱鉛筆 パワータンク スタンダード 0.7mm 黒

ボールペンについても書いておきます。私が使っているのは圧倒的にこれです。三菱鉛筆の「パワータンク スタンダード 0.7mm 黒」。

インクを加圧して押し出す仕組みなので、強い筆圧をかけなくてもくっきりした線が書けます。これが書き殴る用途にはぴったりでした。

普通のボールペンだとはっきり書こうとして自然と力が入ります。ところが想起練習は日によって20枚を超える紙を埋める作業です。力を入れて書き続ければ手が疲れ、疲れれば集中も切れます。

パワータンクは力を抜いたまま書ける分、疲れにくく、いつまでも書き殴っていられます。

メモパッドが「遠慮なく捨てられる紙」なら、パワータンクは「遠慮なく書き続けられるペン」です。この2つが揃って、はじめて手が止まらなくなりました。


私のやり方|テキストを閉じて書き殴る

やっていたことは単純です。

  1. 覚えるべき範囲をテキストで確認する
  2. テキストを閉じる
  3. 覚えている内容をメモパッドに書き出す。字の丁寧さは一切気にしない
  4. 出てこなければテキストを開いて見直す
  5. もう一度閉じて、また書き殴る
  6. 書けるようになったらその紙は捨てる。まだ怪しければ繰り返す

コツらしいコツはありません。ただ思い出そうとして殴り書く、だけです。

覚えていないのならテキストを見て、またアウトプットします。まだ覚えていないなら、また見直してメモパッドに殴り書きます。

結局はこの繰り返しが記憶の定着を促してくれます。

枚数を正確に記録していたわけではないのですが、日によっては20枚以上使っていたと思います。1枚0.54円ですから、20枚使っても11円ほどです。この気軽さが毎日続ける上では効いていました。

図で覚えて、図で書き出す

もう一つ、私が意識していたことがあります。文字だけで覚えようとせず、極力図にして覚え、それをそのままの形で書き出すということです。

図は情報がひとかたまりになっているので、思い出すときに部分部分ではなく全体が一度に立ち上がってきます。そして大事なのは完全に思い出せなくても構わないという点です。思い出そうとするその過程そのものに意味があるのだと今は思っています。

この効果をいちばん感じたのが、第二種電気工事士の技能試験で使う複線図でした。

複線図は単線図を実際の配線に描き起こした図です。技能試験では試験開始後にまず複線図を描いてから作業に入るのが一般的ですが、私は本番で複線図を描きませんでした。描かずに作品を完成させ、40分の試験を30分で終えています。

これは度胸試しをしたわけではありません。

問題を見た瞬間に接地線と非接地線の配置がスッと思い出せるところまで持っていけると、手は自然と動き出す。

実際に本番でもそうなりました。そこまで頭に入っていれば、慌てて描いた複線図を見間違えることもなく、欠陥を作らずに済むのではないかと思います。

紙の上で何度も図を書き出す作業は地味ですが、本番で効きました。

3つの資格で私が書き出していたもの

参考までに、資格ごとに何をメモパッドに書き殴っていたかを書いておきます。

危険物取扱者甲種

消防法別表第一と指定数量を何度も繰り返し書き出しました。物質の性状と法令も同じやり方です。3つの中では覚えるべき量が群を抜いていて、メモパッドの出番もいちばん多かった資格です。

二級ボイラー技士

関係する法令と構造のうち附属装置を重点的に書き出しました。附属装置は名前と役割がなかなか結びつかず苦労した部分です。私はボイラーの構造そのものが最初さっぱりイメージできませんでしたので、ここでも図にして書き出す方法が助けになりました。

第二種電気工事士

各種工事の種類と、そこで使われる電線管の種類・用途・特徴。絶縁抵抗と接地抵抗の検査方法と計器の使い方。そして電気工事士法などの法令。この3つが書き出しの中心でした。技能試験の複線図については前の章に書いたとおりです。

正直、この作業はつらい

ここまで読んで「なんだ、ただ書くだけか」と思われたかもしれません。理屈は単純です。ただし実行するのは決して楽ではありません。

正直に書きます。この作業はとてもつらく、ついつい逃げたくなります。

私は高齢になって記憶力が極端に落ちたという感じはしていません。そうではなく、元々人より記憶力が劣っていると感じてきた人間です。これは昔からのことです。覚えたつもりのことが出てこない。知識として定着しない。思い出せない。そのたびに自分の脳力の足りなさを突きつけられます。テキストを読んでいる間は気持ちが穏やかでいられますが、閉じた瞬間に自分の実力が容赦なく可視化されるわけです。だから逃げたくなるのです。そして逃げている自分がいた。

その気持ちが変わったきっかけがあります。これは私だけのことではないと知ったことです。

程度の差はあっても、皆が平等にもがきながら、自分の脳力の足りなさを実感しながら、その劣等感と戦いながら「記憶」という産物を手に入れている。そう知ってからは、なんとかその劣等感に打ち勝ってこられました。思い出せないのは自分が特別に劣っているからではなく、記憶というものがそういう仕組みだから。そう思えると白紙のメモパッドに向かうのが少しだけ楽になります。

とにかく繰り返すことです。それ以外に近道は見つかりませんでした。

まとめ

60代で3つの国家資格を取る過程で私が確かめたことを整理します。

  • 合否を分けるのは過去問の反復:ただし過去問だけでは越えられない丸暗記の壁が必ず残る
  • 壁にはアクティブリコールが効く:テキストを閉じて思い出す。読み返しは直後だけ強く、時間が経つと逆転される
  • 道具はメモパッドで十分:無印良品 140×100mm・200枚・税込108円・1枚約0.54円
  • 安さが本質:安いからこそ書いては捨てられる。捨てられるからこそ遠慮なく書き殴れる
  • ペンはパワータンク:三菱鉛筆 パワータンク スタンダード 0.7mm 黒。加圧式で筆圧をかけずに書けるので、枚数を重ねても手が疲れない
  • 図で覚えて図で書き出す:完全に思い出せなくても、思い出そうとする過程に意味がある
  • つらいのは全員同じ:そう知ってから続けられるようになった

高価な教材や便利なアプリを揃える前に、108円のメモ帳とボールペンを机に置いてみませんか。私が使い切った3冊は、どれも読み返すことなく捨てました。それでも中身は頭に残っています。

暗記に必要なのは108円の紙とボールペン、そして逃げない気持ちだけです。


※本記事は個人的な受験・学習体験に基づく感想です。商品の価格や仕様は変更される場合がありますので、購入の際は最新の情報をご確認ください。

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