62歳で第二種電気工事士に一発合格|技能試験は複線図を書かずに30分で完成

自分の家のスイッチやコンセントくらい、自分の手で替えたい——。

その小さな願いが、62歳の私を第二種電気工事士の受験へと駆り立てました。

私は2024年(令和6年度)、62歳のときに独学で挑戦し、学科試験98点、技能試験も一発で合格しました。リタイアして1年、ホテルの営繕(メンテナンス)職に転身するより前のことです。

結論から先に申し上げると、第二種電気工事士は「自分の家の電気工事を自分でやりたい」という動機さえあれば、60代からでも独学で十分に合格できる資格です。

この記事では、なぜ62歳にもなって電気工事士を目指したのかという動機から、実際に使った教材、そして一番緊張した技能試験の当日の様子まで、私の実体験をそのまま正直に書いていきます。これから受験を考えている方、とくに「もう若くないから」とためらっている方の背中を少しでも押せたらと思います。

目次

1. なぜ62歳で第二種電気工事士を目指したのか

きっかけはずっと好きだったDIYです。

私はもともと自分の手で家の中をいじるのが好きでした。ところが現役時代は転勤族で住まいはずっと賃貸マンション。壁のコンセントやスイッチを新しいものに替えたくても賃貸ではそう簡単に手を出せません。やりたい気持ちを抱えたまま、何十年もそのままにしていました。

その状況が変わったのがリタイア後にマンションを購入した時です。

ようやく自分の家を自分の思うようにいじれるようになりました。

そうなるとあれもこれもと欲が出てきます。

  • コスモスイッチ/コンセントの刷新:少し古く見えてきたパナソニックのスイッチとコンセントを、新しい「アドバンスシリーズ」に家中まとめて交換したい
  • トイレの換気扇の交換:24時間換気連動の強制ファンなしのタイプで、真夏は湿気や臭気がこもりがち。これを強制ファン付き・オートライト連動のものに替えたい
  • 玄関ダウンライトの自動化:人感センサーの「かってにスイッチ」に変更したい

ところが、ここで大きな壁にぶつかりました。壁の中の配線をいじるこうした工事はすべて第二種電気工事士の資格がないと法律上自分ではやってはいけないのです。コンセントやスイッチの交換くらい、と思われるかもしれませんがこれらは立派な電気工事。無資格でやれば違反ですし、なにより火災につながる危険があります。

「だったら資格を取ってしまえばいい」。

そう思い立ったのが私の第二種電気工事士挑戦の出発点でした。

仕事のためではなく、あくまで自分の家を自分でいじりたいという、きわめて個人的な動機です。

2. 試験の全体像|学科と技能の二段構え

勉強の話に入る前に、第二種電気工事士がどんな試験なのかを簡単に整理しておきます。他のビルメン系資格と違って、この試験には筆記だけでなく「技能試験(実技)」があるのが最大の特徴です。

区分 内容
学科試験 120分・全50問(1問2点)・60点(6割)で合格。筆記(マークシート)かCBT(パソコン)を選択
技能試験 40分。事前公表の候補問題(近年は13問)から1問が出題され、支給材料で実際に配線作品を作る
合格基準(技能) 欠陥が1つでもあれば不合格(現在は「重大/軽微」の区別がなくなり、1つでアウト)
受験料 9,300円(インターネット申込・学科+技能セット・非課税/書面申込は9,600円)

合格率は、学科がおおむね55〜60%、技能が66〜74%ほど。数字だけ見れば決して難関ではありません。ただ、技能試験の「欠陥が1つでもあれば即不合格」という一発勝負のルールが、独特の緊張感を生みます。これは後ほど詳しく書きます。

なお、私が受けたのは2024年で筆記方式でしたが、CBT方式(パソコンで受験、期間内なら好きな日を選べる)も選べます。ご自身の受ける年度の最新情報は、必ず電気技術者試験センターの公式サイトで確認してください。

3. 私が使った教材|学科・技能・YouTube

独学だったので教材選びはすべてweb情報なども参考にして、自分で決めました。

実際に使って教材をご紹介します。

学科試験の教材

  • テキスト:オーム社『ぜんぶ絵で覚える 第二種電気工事士 学科試験 すぃ〜っと合格』
  • 過去問:技術評論社『合格への最短ステップ 第二種電気工事士 学科試験 過去問題集 2024』

「すぃ〜っと合格」は定番中の定番で、名前のとおりイラストが豊富。

正直私はこれはあまり好きではなかったです。情報があちこちに散らかっており、誤植も有りました。

結局は過去問中心の学習方法でしたのでこれは辞書代わりに使っていました。

 学科対策は、結局のところ過去問をひたすら回すのが王道です。

私の実感では、過去問を3〜4周もすれば十分に戦えます。

学科試験のテキストですが上記のように「すぃ〜っと」ではなく↓の方が良いような気がします。(個人の感想ですw)

技能試験の教材と練習材料

  • テキスト:技術評論社『合格への最短ステップ 第二種電気工事士 完全攻略 技能試験編 2024』
  • 練習材料①:「【レンタル版】準備万端シリーズ 令和6年度版 全13問分の器具・電線セット(1回練習分)」
  • 練習材料②:「IK21オリジナル電線セット 2回分」(楽天)

技能試験は、頭で分かっていても手が動かなければ受かりません。ですから練習材料(電線と器具のセット)は必須の投資だと思ってください。私は候補問題13問を一通り練習できる「準備万端シリーズ」に、繰り返し練習用の電線セットを買い足して臨みました。電線は切ってしまえば使い切りなので、少し多めに用意しておくと安心です。

13問を何周するかですが私は技能初心者でしたので3回はやろうと思い、器具を準備万端で用意し、その後の電線練習材料はよりお安く手に入るIK21さんで準備しました。


そして、YouTubeが本当に役に立った

正直に申し上げて、学科も技能もYouTubeの解説動画に一番助けられました

とくに技能試験は、複線図の描き方から、リングスリーブの圧着、輪づくり、器具への結線まで、文字と写真だけではどうしてもピンとこない部分を、動画なら「手の動き」ごと真似できます。

私が挑戦した頃には独学者に向けた良質な動画が無料でいくらでも観られました。今は本当に良い時代になったものだとしみじみ感じます。教材とYouTube、この組み合わせが独学合格の現実的な最短ルートだと、私は思います。

私がお世話になったyoutubeサイトは

  • 日本エネルギー管理センターさん:https://www.youtube.com/@japan-ems
    技能試験の王道的解法を展開されています。ただ基本、複線図は書かない方針ですので初学者には少し敷居が高いかもしれません。技能試験のテクニックに関しては標準的でありまずはここで学んでおくとあとが楽です。
  • ガミデンキちゃんねるさん:https://www.youtube.com/@gamidenki
    元電気科講師で複線図有りきの教え方です。ケーブルは最初に器具に装着し、そこから長さなどを決めていきます。
    分かりやすい講義で初学者も入りやすいと思います。
  • 還電工(還暦ジィージの 電気工事士 試験チャレンジ)さん:https://www.youtube.com/@kandenkou
    その名の通り還暦を超えた方の動画ですが電気工事士に関するテクニックやツールも含めて極めて多くの動画が充実しています。ちょっとびっくりします。
  • 電気屋ペコ:https://www.youtube.com/@corohachi
    候補問題13題すべて15分以内で完成させてしまうというもの凄い動画です。私はこの動画を見ていわゆるガッチャンを購入しましたが1題20分を揃ったことはありません。小気味よい完成のさせ方は見ていて惚れ惚れしました。
  • オンディマンド今井さん(電気工事士奪取プロジェクト):https://www.youtube.com/@dkdpInfo
    独特の口調の今井さん。この動画を見て、複線図は書かずに白線は白線同士、黒線は黒線同士で最後にまとめるという発想と予め結束バンドを数本輪にした状態で用意しておいて中リングスリーブの中でVVF2.0を3,4本まとめる時はそれで結束してから圧着ペンチでかしめるという方法を取るようになりました。正直、これで本番の技能試験では心穏やかに笑、中スリーブを圧着できたと確認しています。

4. 学科試験の当日|98点、でも最初の10分はぼーっとしていた

学科試験は2024年5月に受験しました。

結果を先に言うと、98点。受験している最中に「これは受かったな」と確信できたほど、手応えは十分でした。過去問を3〜4周した効果が、そのまま出た形です。

ただ、正直に告白すると、試験開始からの最初の10分ほどは、なぜか緊張していたのか、頭がぼーっとしていた気がします。久しぶりの試験というものに、体が構えてしまったのかもしれません。それでも問題を解き進めるうちに調子が戻り、あとは落ち着いて解ききれました。よく「難しい」と言われる計算問題も、私には特別に難しいとは感じませんでした。基礎理論の計算は、過去問で出るパターンが決まっているので、恐れる必要はありません。

学科試験に関して言えるのは、とにかく過去問を繰り返すこと、これに尽きます。奇をてらう必要はまったくありません。

5. 技能試験の当日|ピリピリした40分と、複線図を「書かない」という選択

さて、この記事で一番お伝えしたいのが、7月に受けた技能試験のことです。

学科があれほどリラックスして受けられたのに対して、技能試験はまるで別物の緊張感でした。なにしろ40分という制限時間のなかで、たった1つの欠陥も許されない。作品が完成しても、心のどこかで「あの結線は大丈夫だったか」「圧着マークを間違えていないか」と、合格発表の日まで悩み続けたほどです。実際、私は最後まで合格を確信できませんでした。それでも、結果は無事に一発合格。あのときのホッとした気持ちは、今でもよく覚えています。

複線図を「書かずに」完成させた話

技能試験の定番の教えに、「まず複線図(配線を実際の線の本数どおりに描き起こした図)を描いてから作業に入りなさい」というものがあります。私も試験の数日前まで、本番で複線図を書くか書かないかで、相当に迷いました。

そして最終的に、私は複線図を書かずに、頭の中で回路を組み立てながら作品を完成させることを選びました。結果的にこれは、私には正解でした。複線図を書かなかったぶん、おそらく5分ほどは時間を節約でき、その5分が心の余裕につながったのです。

ただし、これは「複線図は不要」という意味ではまったくありません。練習の段階では、複線図を何度も描いて回路を体に叩き込みました。練習で徹底的に描いたからこそ、本番では頭の中だけで組めるようになったのです。ここは誤解のないよう、正直に補足しておきます。書いたほうが安心できる方は、迷わず書いてください。

ストリッパーは2本を使い分けた

工具選びでも、私なりの工夫がありました。ケーブルの被覆を剥くストリッパーです。

私は、MCC VA線ストリッパ (エコ) VS-4Aと、途中で買い足したビクター(VICTOR)VA線ストリッパー 6004VAの2本を持ち込み、使い分けました。

  • 作業の9割はビクター 6004VAを使用。こちらは剥くスピードが速く、時短に大きく貢献してくれました
  • ただし、電源側の太いVVF2.0-2C(直径2.0mmの2芯ケーブル)だけはMCC VA線ストリッパ (エコ) VS-4Aを使用

なぜ使い分けたかというと、6004VAで2.0mmの太い線を剥こうとすると、私は高い確率で失敗したからです。細い線は速い6004VA、太い線は確実なP-958。この使い分けが、限られた40分のなかで大きな安心材料になりました。

ちなみにホーザンからもP-958というハサミ型のVAストリッパーが出ていますし、私も持っていたのですが両面にメモリが付いていて”のの字曲げ”の時にMCCのVAストリッパーの方が刃が歪まないのでこちらを買い足しました。

工具は「1本にこだわる」より「適材適所で持ち替える」。これが私なりの、時短と確実さを両立させるコツでした。

使い分けた2本のストリッパー。左が確実なMCC VA線ストリッパ (エコ) VS-4A、右が時短のビクター6004VA

30分で完成、10分残して見直し

こうして本番では、制限時間40分に対して30分で作品を完成させ、10分を見直しに使えました。周りを見渡すと、私が手を止めた頃、多くの受験生はまだガシガシと作業の真っ最中。不謹慎かもしれませんが、少しだけ鼻が高かったことを、正直に白状しておきます。

ちなみに同じ教室の受験生の顔ぶれは、女性が3〜4名、私と同じくらいの年配が私を含めて3〜4名、残りの30名ほどは20代から40歳手前くらいの男性、という印象でした。若い方が多いなかで、60代でも十分に戦えると分かったのは、大きな自信になりました。

6. 資格を取って、本当に良かったこと

もともとは「自分の家をいじりたい」という動機で取った資格ですが、結果として、その後ホテルの営繕職に転身するうえで、この資格が私を大きく後押ししてくれました。

営繕の現場で実感するのは、第二種電気工事士を持っているのと持っていないのとでは、職場での信頼感がまったく違うということです。実際に、ホテル内のコンセントの移設、ダウンライトの配線、3路・4路スイッチの結線など、試験で学んだ知識と技能が、そのまま日々の仕事で役立っています。

最近、営繕やビルメンテナンスの求人を眺めていると、「第二種電気工事士 歓迎」「第二種電気工事士 限定」といった文字がずいぶん目立つようになりました。受験にはお金も時間もかかりますが、取っておいて本当に損のない資格だと、心から思っています。

7. まとめ|60代からでも、電気工事士は十分に取れる

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 62歳・独学でも一発合格できる。動機さえあれば年齢は壁にならない
  • 学科は過去問を3〜4周すれば十分。計算問題も恐れなくてよい
  • 技能はとにかく手を動かす練習が命。練習材料への投資は惜しまない
  • 複線図を書くかどうかは人それぞれ。練習で描き込んだうえで、本番の自分に合うやり方を選ぶ
  • ストリッパーは細い線と太い線で使い分けると安心
  • 教材とあわせて、YouTubeを最大限に活用するのが独学の近道

「もう歳だから」とためらっている方にこそ、私は挑戦をおすすめしたい。自分の家のスイッチひとつを自分の手で替えられるようになる喜びは、資格の勉強の苦労を補って余りあります。

60代からでも、第二種電気工事士は十分に取れます。

※本記事は私個人の体験に基づく感想です。試験制度・受験料・試験方式(CBT/筆記)・候補問題数などは変更される場合があります。受験にあたっては、必ず一般財団法人 電気技術者試験センターの公式情報を最新でご確認ください。

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